「中学部活動の地域移行」山本美和議員の一般質問(2024/9/11)

2024年9月11日県議会一般質問が行われ、県議会公明党の山本美和議員が、質問に立ちました。 山本議員は、少子化と教員の負担軽減を目的とした中学部活動の地域移行が進んで現状を指摘しました。その現状の中で、地域社会全体でこの移行を支える必要があり、受け皿となる地域スポーツクラブの整備が急務であると強調しました。 また、つくば市など重点地域での課題に関する事業が進行中であり、その成果が期待されるとしました。

少子化に伴う学校規模の小規模化や教員の負担軽減を目的として、部活動の地域移行が進められており、2023年度から本格的に開始されたこの取組は、2025年度までを「改革推進期間」としています。しかし、地域移行には多くの課題が存在し、その解決には地域社会が一体となって取り組む必要があります。

そもそも「部活動」とは何か。教育改革に関する研究で知られる筑波大学の佐藤博志教授によると、日本の部活動は、スポーツマンシップを象徴とするイギリス発祥の近代スポーツが、明治時代に日本の産業革命と共に導入され、大正・昭和初期までに全国の中等教育機関に普及しました。部活動は近代化、帝国憲法、学校令、教育勅語理念の影響を受けて実施され、戦前の教育の徳目主義からも分かるように、部活動の精神主義の源流がそこにあります。明治維新以降、そして戦後の高度経済成長期に再び、精神主義と競争主義が社会に浸透し、部活動はその一つの現象として見られました。佐藤教授は、「部活動の実態は、政策、制度、国民の意識、文化が関係していて、部活動の問題を解決するためには、部活動それ自体だけでなく、他の様々な社会的事象との連関での問い直しが必要である」と述べており、この見解に同意します。

2008年改訂以降の学習指導要領では、「生徒の自主的、自発的な参加により行われる部活動については、学校教育の一環として、教育課程との関連が図られるよう留意すること。その際、学校や地域の実態に応じ、地域の人々の協力、社会教育施設や社会教育関係団体等の各種団体との連携などの運営上の工夫を行う」と記載されています。部活動は、「学校の教育活動」として位置づけられていますが、法令に基づく「教育課程」ではなく、自発的自主的な「教育課程外の活動」という位置づけです。そのため、学校教育の一環でありながらも付加的な位置づけにより、学校や教員の裁量に依存して条件整備が不十分なまま、部活動の教育的活用が拡大してきました。2014年OECD「国際教員指導環境調査」では、日本の教師が課外活動に費やす時間が7.7時間と、参加国平均2.1時間に比べて非常に長いことが明らかになりました。これにより、教師の働き方改革や教師の役割の見直しが政策課題となったことは皆さんもご存知のことと思います。

2019年の中教審答申では、部活動の指導を「学校の業務だが,必ずしも教師が担う必要のない業務」に位置付け、「将来的には、部活動を学校単位から地域単位の取組にし、学校以外が担うことも積極的に進めるべき」との考え方が示されました。2022年12月策定の「学校部活動及び新たな地域クラブ活動の在り方等に関する総合的なガイドライン」に沿って、部活動の地域移行が本格的進められることになりました。

また、様々な民間クラブが地域移行の受け皿として期待されていますが、経済的自立を含め、機能するための事業環境の問題を検討するために、文部科学省だけでなく経済産業省においても「地域×スポーツクラブ産業研究会」が立ち上げられ、議論が進められてきました。2022年に取りまとめられた提言では、これまで部活動が担ってきた教育的価値についても、『部活動が生活指導的な意義があることは確かだが、スポーツクラブでもマナーや礼儀は大事にしており、「学校外ではそれを提供できない」というのは本当だろうか?』また、『学校と部活動が一体であることに「プラスの面」はあったはずだが、学校の先生だけでなく「多様な大人の多様な考え方」に接する機会を増やすことも、子どもたちにとってプラスではないだろうか?』といった「問い直し」も必要であると提言されたほか、受け皿クラブがある地域とない地域との格差について、「地域を挙げて、世代を越えたスポーツ環境を生み出せるかどうかにかかっているのではないか?」など、部活動の地域移行に係る様々な課題に対しての問いかけがなされたところです。

そこで、これまで部活動が担ってきた教育的価値についての教育長のご所見と、受け皿クラブのある地域とない地域の格差など、中学部活動の地域移行に関する課題について、本県における現状と今後の取組を、教育長にお伺いいたします。

重点地域における政策課題への対応に係る事業と期待される成果

先月23日、国において、現在進行中の「改革推進期間」が終わる2026年度以降の取り組み方を検討するため、第1回「地域スポーツ・文化芸術創造と部活動改革に関する実行会議」が開催されました。スポーツ庁による実証事業の2年目となる「地域スポーツクラブ活動への移行に向けた実証事業」は、令和6年度予算として32億円、令和5年度補正予算として15億円を計上し、合計47億円の予算を計上しています。原則として国費だけではなく、一定の割合の受益者負担や行政・関係団体の自主財源からの支出、企業等からの寄付などと組み合わせることで、持続的な活動を前提とした仕組みを構築し、検証しています。

県内では、つくば市をはじめ積極的な地域移行の実証事業が行われており、地域ごとの特性に応じた取組が進んでいるところであり、令和5年度には16市町、本年令和6年度には32市町村が実施しています。

さらに、今年6月には、土浦市、高萩市、つくば市、守谷市、神栖市の5市が、多様なスポーツ機会の提供、アスリート人材等の活用、民間資金の活用、動画コンテンツ等の活用などの政策課題や地域スポーツ環境の整備に先導的に取り組む地域、いわゆる重点地域として国に選定されており、部活動の地域移行の推進にますます期待が高まります。 そこで、重点地域における政策課題への対応に係る事業と期待される成果について、教育長にお伺いいたします。